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07/15 update
「恋は“する”ものじゃなくて、“落ちる”もの。」


少なすぎる出逢いとゲイであることをカムアウトできない身の回りの状況を突破するために、彼女は初めてウーマン・オンリーのクラブに行った。
その目的はもちろん、someone specialを探すため。

彼女は会社でカムアウトする勇気は持ち合わせていなかったが、幸いにもクラブで自分から声をかけてナンパする勇気は有り余るほど持っていた。

その勇気のおかげで1カ月もすると、彼女にはかなりの数のクラブ友達ができていた。
しかし、someonespecialを見つけることはそうそう容易なことではなかった。
彼女の理想としているタイプの子はなかなかいなかったし、いたとしても既に恋人付きだった。

何かに夢中になっている時に流れる時間は恐ろしく速く、彼女がsomeone special探しを必死でやっている間に、シレッと数カ月がたってしまった。 そして彼女は思った。

 「もう、どーでもいーや」 クラブ友達が大勢できたおかげでこれまでの孤独なゲイの寂しさから開放された彼女には、someone specialを探すモチベーションが希薄になっていた。

それから彼女はsomeone specialを探すためではなく、友人に会うために、友人と話すために、そして友人を増やすためにクラブに行くようになった。

ある日、いつものクラブでいつものように友人倍増計画を実行した彼女。しかし、その日はあまりにも多くの人に声をかけすぎ、帰宅したときには人の名前と顔が一致しなくなっていた。にもかかわらず、たった一人だけ名前と顔が完全に一致する人が彼女の記憶に残像として残っていた。

その残像が消える間もなく次のクラブがやってきて、いつものように友達づくりを開始しようとした彼女の目の中に、残像が具体化されて入ってきた。
それが、彼女の頭の中にはっきりと存在していた残像の女(ひと)だった。

彼女はその時はじめて気がついた。その女(ひと)に惚れたことに。いや、正確に言うならば、惚れてしまっていたことに気がついたのだ。

恋をしようと必死だった時にはみつけ出せなかったsomeone specialは、恋を探すのをやめた時に現れた。

「恋は“する”ものじゃなくて、“落ちる”もの」 陳腐でありがちなセリフだけれど、彼女の口からこぼれ出てくるその言葉は、彼女が見つけたそこにしかないたったひとつの真実なのだろう。

春先の夜風にあおられならがら
written by 3%ノンフィクションライター伊達カヲル
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