前作「RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 」がおもしろかったので、2作目を読んでみました。緑子(通称RIKO)が子持ちになっている、という設定なのですが、前回より更に深い作品になっていました。ミステリーとしてではなく、セクシャリティやジェンダーを扱っている作品として、です。
冒頭で、性同一性障害の男性(なので、「女性」ですね)が登場し、RIKOに人探しを依頼。その人物を探すうちに、深く暗い闇につつまれた過去の事件への歯車が回り始めます。
本作では、性同一性障害、ゲイ、レズビアンが登場し、そのセリフや描写には気持ちがこもっていて、妙にリアル。やはり作者は当事者なのかな、と思ったりします。好き嫌いもあると思いますが、文体もきれいで一定のリズムがあり、一度読み始めると、最後までサーッと読んでしまいます。ページをめくる指が止まらない!ってことではなくて、自然とめくっていて、というかページをめくっている気がしないというか・・・。気づくと読んでしまっているんです。
今回、より深くなっている、というのは、ゲイの男性、レズビアンの女性、そして性同一性障害の男性が登場する、ということだけを指していっているのではなく、赤ちゃんの存在も含めています。同性である女性を愛したRIKOが産んだ子供。その子供への愛、今も持ち続ける愛した女への情、そして子供の父親への情。すごく複雑です。
愛し合うこと。でもうまくいかないこと。赤ん坊という男性と女性の間でしか(今のところ)生まれない真実。絶望と希望、その上での選択。
守るもの、守るためにすべきこと。
個人的には、そんなメッセージが描かれているように感じました。
少し切なくて、でも最後には明るいエンディング(未来)に繋がっています。
ちなみに当事者なんじゃないかと思っている作家さんは、名前から男性だと思われがちですが、実は女性です。とはいえ、中身を読めば女性としか思えませんが。
ぜひ手にとって、1作目から読んでみてください。
1作目のレビューも掲載しています。
■「RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠」レビュー
3作目のレビューも掲載しています。
■「月神(ダイアナ)の浅き夢」レビュー