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性同一性障害理解を 特例法施行から2年、低い認知度

2006年11月12日
体と心の性が一致しない性同一性障害の特例法が施行され、性別の戸籍変更が可能になって2年が過ぎた。全国で218人が変更を認められた(2005年7月、最高裁まとめ)が、東北では6人にとどまる(各家裁まとめ)。

8月末に女性から男性へ戸籍を変更した宮城県内の自営業男性(30)が河北新報社の取材に応じ、「東北では、医師や学校現場での認知度がまだ低い。苦しむ人は多いはず」と訴え、戸籍変更や性別適合(性転換)手術を実施した心境を明かした。

「男として生きる欲を忘れずに生きてきたことが力になった」という男性。来春、知り合って10年になる女性と念願の結婚が控える。「内縁の妻では(相手が)生きていけない。戸籍変更は必要だった」と笑顔で語る。就学前から自分の異変に気付いたという。「七五三の着物や赤いランドセルが嫌いだった」。所属していたサッカーのスポーツ少年団ではいじめに遭い、中学校ではセーラー服着用を強要された。「苦痛の毎日だった。本気で自殺も考えた」と振り返る。

転機は高校。同じ境遇の友人に出会い、サッカーにも打ち込めた。「男として生きたいんだ」。自分の心に素直になれるようになった。26歳の時、東京の形成外科で胸を切除。ホルモン治療を続け、今年5月に埼玉医大で性別適合手術を受け、戸籍変更が認められた。

「私は障害という壁があったからこそ、自分が大きく変わる喜びを感じられた。性に悩む人は1人で抱えず、進んで精神科へ相談した方がいい」と呼び掛ける。戸籍変更は、2004年7月施行の特例法で可能になった。申請に基づき家裁が許可する。東北の各家裁の許可数は、青森二(10月末現在)、盛岡ゼロ(同)、仙台三(05年末)、秋田一(同)、山形ゼロ(9月末)、福島ゼロ(10月末)となっている。

特例法は「身体の性器に係る部分に近似する外観を備えること」など、性別適合手術が前提となっている。手術を実施している医療機関は、埼玉医大などごく一部に限られている。日本精神神経学会の前理事長山内俊雄埼玉医大学長(精神医学)は「精神、外科、泌尿器など各科の医師が障害を理解し、チームをつくれる病院でなければ手術はできない。さらに認知度を広げる必要がある」と話す。

手術に踏み切れず、悩み続ける人も多い。秋田県を拠点に活動する民間団体「性は人権ネットワーク」の真木柾鷹代表は「手術を望まない人にも戸籍変更の道を開いてほしい」と、法のさらなる整備を求めている。

[性同一性障害]自分が属すると考える心理的な性別と、肉体的な性別が食い違う障害。国内に1万人以上いると推測されている。日本精神神経学会は今年1月、診断と治療の指針第3版を策定、手術を受ける際の倫理委員会の承認手続きを省略するなど要件を緩和した。

(河北新報)

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