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<卵子バンク>東京の業者が事業開始 ドナーは韓国で採卵

2007年1月24日
有償で卵子提供を希望する日本人女性を「卵子バンク」に登録し、不妊のカップルなどにあっせんする事業を東京都内の業者が始めていたことが24日分かった。

日本産科婦人科学会や03年の厚生労働省の生殖補助医療に関する報告書では、第三者による有償の精子、卵子提供を認めていない。この業者は、96年設立の「エクセレンス」(東京都品川区、佐々木祐司代表)。昨年7月に卵子バンクを始めた。現在9人が卵子ドナー(提供者)として登録。購入希望者と契約が成立したケースが2件、あっせん継続中が1件あるという。

購入希望者は、不妊に悩む夫婦や同性愛カップルなどだったという。 同社はホームページ(HP)で登録者を募集。卵子ドナーの条件として20〜28歳、職業と学歴不問と記載し、報酬は100万円。希望者はHPの申し込み欄に身長、出身校、病歴、自己PRなどを書き込んだ上で、上半身の写真を送る。

あっせん手続きでは、卵子ドナー登録者と卵子購入を希望する夫婦らを直接面会させる。契約が成立すれば、卵子ドナーは韓国に2週間程度滞在して、同国内の病院で採卵。購入を希望した夫婦の夫の精子と体外受精、妻の子宮への移植も同国内の病院で実施する。夫婦が支払う費用は、同社へのあっせん手数料、ドナーへの報酬、病院費用など400万円近くになる。

韓国内では05年に「生命倫理および安全に関する法律」が施行され、卵子の売買や、営業目的のあっせんが禁止された。卵子バンクは、同法に抵触する可能性があるが、佐々木代表は「日本人が日本で契約し、韓国の病院に行くだけなので問題ない」と話している。

同社はこれまでにも、生殖補助医療に関する事業を展開。98年に同社の精子バンクを利用した未婚女性が妊娠、出産したことが分かったほか、05年には代理出産を仲介したことも明らかにしている。

■解説 不透明な点多い
生殖補助医療のルール作りが進まない中、国内業者による日本人女性の卵子あっせんビジネスが始まった。採卵時の危険性のほか、韓国の法律に触れる恐れなど不透明な部分も多い。

厚生労働省の生殖補助医療部会は03年、第三者からの卵子提供を認める報告書をまとめたが、営利目的の提供は認めなかった。日本産科婦人科学会の指針などでも、卵子・精子の営利目的のあっせん、それらを使う体外受精の実施を禁じている。だが、厚労省の報告書に基づく法整備は実現しておらず、学会指針に法的強制力はない。

卵子提供では、提供者の身体的負担も問題だ。排卵誘発剤など薬剤による副作用や、採卵時の事故もゼロではない。今回の業者は、インターネットのホームページ上では、採卵の危険性に触れていない。清水清美・国際医療福祉大講師(看護学)は「卵子提供には、検査などを含め最低1カ月半ほど時間が必要だ。提供者を守る枠組みがきちんとできているかどうか心配だ」と話す。

卵子バンクなど生殖補助医療ビジネスが盛んな米国でも、アジア系の卵子ドナーは多くはない。日本人ドナーを希望する不妊夫婦にとって、今回のビジネスは魅力的かもしれない。ただ、営業目的での提供を禁止している韓国で、一連の治療が実際にできるかどうかは不透明だ。日本学術会議は先月、生殖補助医療に関する検討委員会を設置した。法の不備による安易なビジネス拡大を防ぐためにも、国レベルでの姿勢を示すことが急務だ。

(毎日新聞)

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