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大阪の同性愛者、民主公認の参院選候補に 支援広がる |
2007年6月13日
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日本の同性愛者にとって、今回の参院選は大きな転換点になるかもしれない。自らレズビアン(女性同性愛者)であることを公表した元大阪府議が、民主公認で比例区に立候補することになったからだ。国内の同性愛者は少なくとも100万人超とみられるが、これまで主要政党の候補になった例はない。「政治の場に声を届けるチャンス」と同性愛者らの間で支援の動きが広がり、「日本社会の変化」とみる海外のメディアの関心も集めている。
20〜30代のゲイ向け月刊誌「バディ」(8万部)6月号。3人の男性が「同性愛者の政治参加」を語り合う座談会など、参院選の特集記事が計8ページ掲載された。いわゆるアダルト雑誌で、「政治」を取り上げるのは異例のことだ。
レズビアンで元大阪府議の尾辻かな子氏(32)が参院選に立候補することになったのがきっかけだ。同誌は公認が決まる前の4月号にも尾辻氏のインタビューを載せた。同誌の営業部長(30)は「国政に同性愛者を送り出せば、時代が変わる。若いゲイの子が政治に関心を持つきっかけになれば」と期待する。
自ら同性愛者であることを公表して国政をめざした例としては、「雑民党」代表の東郷健氏らがいるが、尾辻氏のように主要政党の公認を得た例はない。
今月9日夜、東京・早稲田の「パフスペース」。同性愛の女性ら約60人が、月例のイベントに尾辻氏を招いた。関西出身の尾辻氏とは初対面の人も多かったが、会場は高揚感に包まれた。
「ニュースで尾辻さんを見て、衝撃を受けた」「ひとりで頑張れとは言わない。一緒に頑張りましょう」。メッセージを読み上げた16人には涙ぐむ人もいた。
大阪で女性パートナーと暮らす介護ヘルパー、岡亜沙美さん(30)は5月、尾辻氏の集会で初めて応援演説に立った。中高生時代は周囲とうち解けられず、「異性を好きになれない自分は生きている意味がないのか」と、自殺を考えたこともある。が、今回は「同じ立場で苦しんできた人が国会で発言する姿を見れば、孤独な人にも希望が生まれるはず」と、個人参加で選挙活動にかかわることを決めた。
ロイターやAFP通信など海外メディアも一斉に反応した。AFPは「欧米に比べ遅れている性の多様性に対する認識/偏見への改革を使命に」などの見出しで報道。社団法人「日本外国特派員協会」(東京)も20日、尾辻氏を招いて記者会見を開く。
任意団体「ゲイジャパンニュース」によると、同性同士の結婚を認めたり、パートナーシップ法などで法的権利を保障したりする国は約30。報道の背景には「対応が遅れてきた日本が変わる契機になるか」(関係者)との関心もあるようだ。
ただ、民主党内にも当初、「保守票が逃げるのでは」「同性愛に関する政策をまとめていない」などと慎重論があった。今も党側には「なぜ公認したのか」などと、問い合わせの電話がかかるという。
支援する側にも難しさがつきまとう。9日の集会に参加した女性(29)は「応援することが、周囲へのカミングアウト(公表)と同じ意味も持つ悩みがある」。親友を除けば、同性愛者だとは知らせていないからだ。支持者の間からは「ヘテロ(異性愛者)にも訴えられる政策を充実するべきでは」との声もある。
尾辻氏が事務所を構えた「ゲイの街」、東京の新宿2丁目振興会の福島光生会長(48)はいう。「今回を逃せば、次はいつ同性愛の候補者が公認されるかわからない。票を出せば、我々の存在に気づいてもらえる。このチャンスを生かし、少数者の声を国会へ届けたい」
<日本の同性愛者>
厚生省の研究班が99年に行った全国調査では、回答した3562人中、同性との性的接触の経験があると答えた男性は1.5%、女性1.8%。単純に人口比で計算すれば100万人超になるが、京都大学大学院の日高庸晴客員研究員は「正直に答えられない人もいたとみられ、実際は数百万人とも言われる」と指摘する。アメリカの92年の調査では4〜5%だった。同性カップルの法的地位を巡っては、オランダやカナダ、イギリスなど約30カ国が同性結婚あるいは婚姻に準ずる権利を法で認めているが、日本では確立されておらず、居住や相続、社会保障などの面で権利拡大を求める声が根強い。
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