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オススメの一冊 バックナンバー001 |
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ゼウスの檻
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■著者:上田 早夕里 (著)
■出版社:角川春樹事務所
■価格:¥1,890 (税込)
■出版時期:2004年11月出版
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<紹介文> |
宇宙居住区の開発に乗り出した人類は、月面、火星さらには木星へと計画を推し進めていた。中でも木星には、“ラウンド”と呼ばれる人々が、宇宙開発が人体に及ぼす影響を探る実験の被験体として居住していた。それは、両性種すなわち男女両性の機能を身体に備えている新人類とも言うべき存在であった。
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<レビュー/コメント> |
木星の軌道上に建設された宇宙ステーション「ジュピターT」では遺伝子操作によって作
り出された「ラウンド」と呼ばれる両性具有の新人類が、従来の人間「モノラル」たちと
暮らしていた。ラウンドはある意味、プラトンが想像した「男と女に分かたれる前の完全
なる人間」であり、彼らの意識には性差というものがない。しかし彼らをとりまくステー
ションスタッフや警備課のモノラルははラウンド一人ひとりに対して無意識に自分の基準
で性別を投影してしまう。そして今、ジュピターTに迫っている最大の脅威は、生命倫理
の面からラウンドの研究に反対する<生命の器>、その組織はテロによってラウンドとラウ
ンドに関する研究を葬り去ろうとしていた。
「異なるものたち」が分かり合い、共存することは、不可能なのか?
そしてテロリストとジュピターTの戦いはどうなるのか?
この本では意識の差、習慣の差から来るさまざまなトラブルや、未知のものと共存しよう
とするときの好奇・軋轢・悩みなどが、熱意を持って描かれています。SFの道具立てにな
じみがない人でも、モノラルが語る「モノラルといっても、われわれは一人ひとり違う個
性を持っている」という発言、ラウンドが語る「その無神経さが私たちを傷つけるので
す」など、セクシュアリティとジェンダーに関わる様々な意見のひとつひとつにうなずき
ながら読み進めることができるでしょう。
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